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二 高校生の小論文から [講座]

 ここからは高校生の小論文です。紹介するのは、私が担当した某大手予備校の高校部クラスのものです。生徒からたびたび質問されるのが、作文と小論文との違いです。簡潔にいいますと、「私」のある文章が作文、「論」のある文章が小論文です。小といえども論文はまず、客観性のある論理が必要です。小論文的作文は可能です(科学エッセイのように)が、作文的小論文は不可、独りよがりに陥るからです。

Ⅰ 小説から
課題:夏目漱石の『三四郎』の次の場面を読んで、三四郎と美禰子の心理を二百字以内で分析せよ。
                                   (某大学受験クラス)
㊟ 200字ですから小論文というより「記述問題」のレッスンですが、小論文の要領と同じです。なお、200字以内とは、180字以上で可ですが100字以上は不可となります。

《場面》学問の志をもって田舎から東京へ出てきた主人公、三四郎にとってはなにもかも新しい世界であった。中でも華やかな女性との出会いに心躍らせながらも、うぶな三四郎はどう対処していいかわからず、相手の美禰子に「ストレイ・シープ」(迷える子羊)とささやかれてしまう。
 そんな二人のある場面—(例:新潮文庫『三四郎』100頁以降)の会話を参考に、あなたもレッスンしてみてください。

羊座3,4月.JPG

解答例

 二人の間の主導権は美禰子にある。三四郎は彼女の言動に振り回され、戸惑いを感じている。それは「ストレイシープ」という彼女の言葉に困っている様子にも現れている。三四郎は女性にうとい、うぶな性格で、彼女の繊細な心の動きについていけない。一方、美禰子は近代的な女性。その言葉はころころと変化する。そんな女を懸命に理解しようとして、三四郎は一種の「迷子」になっている。(高3女子)
《評》みごとな分析ですね。キーワードの「ストレイシープ」をうまく使ています。美禰子—女性ー女という3通りの使い分けは、意図的でしょうか。たとえば、女性ー一般化、女ー男との対比を意図しているなら、文章テクニックもなかなかのものです。

解答例

 三四郎は何事にもぶきっちょである。しかし、純粋で可能性に満ちた青年である。それに対して美禰子は、自由気ままに日常をおくっている。そして彼女はまた、プライドが高く、華やかに振る舞う。そんな美禰子に三四郎はひそかに惹かれているが、彼女のはきはきとした物言いにおどおどし、きりきり舞いさせられている。(高3女子)

《評》対照的な二人の人物の性格を前提に、結論を合理的に導き出しています。「ひそかに惹かれている」とは、男性心理を鋭く捉えていますが、美禰子のほうはどうだったのでしょうか。(全員女子のクラスでしたが、どちらかというと美禰子の心理が少し難しいようでした。)

次回はⅡ 論説から 




 
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