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《資料》天声人語(朝日新聞)から [講座]

 入試小論文の練習用に、朝日新聞のコラム『天声人語』が昔からよく用いられてきました。私も、高校や予備校で指導する際よく活用したものです。特に時事問題に関しては「社説」より平易な文体、語彙が特徴であるコラムの文章は、字数も少なく(600字程度)中学・高校生にはとっつきやすいのです。ただ字数が少ない分、筆者の巧みな表現で語られるので、そのテーマや論理を見逃さないことが肝要です。
 ここではその『天声人語』から1つ、時事問題にして普遍的な問題でもある「核兵器」を取り上げてみました。なお、この問題(核の問題)は見方によっては民意を二分していますが、あえて文章の素材として引用しましたので、皆さんの頭で皆さんの文章で考えをまとめてください。

「天声人語」
 原爆が投下されて1年が経った1946年の8月6日、広島市で「平和復興祭」という名の催しがあった。犠牲者の慰霊だけでなく祝祭の趣があったようで、花電車が走り、仮装行列が見られた▼着飾った少女たちの行列もあり、三味線や太鼓も出ていたと、その日広島を訪れた中国配電(後の中国電力)の岡山支店長が書き残している。かなりの違和感を覚えたらしく「広島市の人々は一体何を血迷ってのこのお祭り騒ぎであろうか」と綴っている(宇吹暁(うぶきさとる)『ヒロシマ戦後史』)▼当時は連合国軍の占領下にあり、原爆への批判は許されなかった。被害より復興に焦点を当てたいという気持ちもあったろう。それにしても現在の原爆忌とはあまりに違う。▼核兵器を絶対悪ととらえる考え方は時間をかけて育まれてきた。ビキニ環礁(*南太平洋)で米国が行った水爆実験(*1954年3月1日)の衝撃が、原爆の災禍を改めて思い起こさせた。多くの原爆文学、そして被爆者の手記や証言が人々の心を揺さぶった。流れの先に核兵器禁止条約がある▼条約は今年(*2021年)1月に発効し、55の国と地域が批准している。「核兵器の終わりの始まりだ」とは広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんの言葉である。悲しいのは、日本政府がこの条約に背を向け続けていることだ。核保有国の米国に追随するかのように▼きょうの平和式典で、首相(*菅前首相)は前任者(*安倍元首相)と同じく条約に言及すらしないのだろうか。占領下で米国の顔色をうかがわざるをえなかった時代は遠く過ぎたはずなのに。(2021・8・6)
 *は当講座による㊟です。なお、2022年現在の岸田首相も8月6日広島及び9日長崎において核兵器禁止条約の批准については言及しませんでした。文中の▼は、句点と改行の印でしょう。

 この文章をもとに次のように練習してみてください。

1<要約文>要約とは、要点を約(つづ)めることだから、事実のみを書き、感想等は不要です。
問題:この文章を200字、及び400字に要約せよ。(指定の字数の8~9割は必要、字数過多は減点、または0点。)
 ヒント:400字の場合は、全体の3分の2だから、かなりの部分を引用できますが、200字では、思い切って絞り込む必要があります。どちらも、文章として完成していることと、必須語句(「原爆投下」「核兵器(禁止条約)」等)を書き落とさないこと。

2<意見文>あなたの「意見」を書きますが、提示された文章(『天声人語』)の素材から離れてはいけない。
問題:この文章をもとに、あなたの意見を800字以内で述べよ。(字数は8割が目標)
 ヒント:あなたの意見を補強し、あるいは発展させるために素材を生かすのが賢明で、話題を拡大し、また逸脱することは避けること。しかし、原文を引き写すだけでは、得点は得られません。たとえば、戦争反対の立場から、条約に賛成(または反対)する場合は、その根拠を明確にして独自の意見を述べるのが求められるところです。
                              (以上でこの章終わります)

 



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